AIS[株式会社エー・アイ・エス]日本人のためのインテリジェンス

わたしたちは、みなさまの笑顔を守るため、また新しい活力溢れる未来をつくるために質の高いインテリジェンスでお守りします。

環境・食品

[2008.06.03] これで良いのか高速道路
         −米国方式に学ぶ日本の高速道路考−   (その1)

■問われる日本の高速道路
 この半年、日本ではガソリン税の暫定税率や道路特定財源に象徴されるように、道路整備のための財源問題が大きな社会問題となっている。かつてOECD(経済開発協力機構)から指摘されているように日本の土木系公共事業費は、先進諸国で突出して高く、さらに公共事業費の約1/3が道路事業にあてられてきた事実がある。
 こと高速道路に関してはもともと料金収入をもとに整備し、償還後、国民が無料で使えることになっていた。だが、舌の根も乾かぬうちに、国はプール制なる詐欺的な整備方式に法を改正し、全国津々浦々、採算性を無視して国土幹線自動車道が造られるようになってしまったのである。また高速道路建設には自治体の一般道路整備関連経費が費やされることから地方自治体の財政状況を悪化させてきた。
 しかも道路公団の民営化によって新たにできた「道路保有・債務返済機構」は道路公団から実に40兆円に及ぶ累積債務を引き継いでいる。政府は料金収入により累積債務を償還、帳消しにするなどと言ってきたが、日本国民誰ひとりとして、それを本気で信ずる者はいない。そして巨額の累積債務を民営化した高速道路株式会社から切り離すことによって、日本ではさらに不要な高速道路が多数造られようとしている。いずれにせよ、高速道路の財政問題は、国民にとって最もわかりにくい問題のひとつであることに違いがない。
 ところで、米国では国論を二分する大議論の末、高速道路の整備に税金を投入するいわゆる「直轄方式」が採用された。その後、米国では1956年に連邦補助高速道路法(Federal Aid Highway Act)が制定され、今日に至るまで高速道路の整備は税で行われ、国民は無料で高速道路が使える。米国の高速道路は、ただで使えるだけでなく、情報公開、市民参加に基づいた環境アセスメントにおいて市民による代替案の相対評価が行われるなど、大きな特徴をもっている。さらに、無料であることで高速道路と一般道路との有機的な連結が可能となり、それが地方分権、地域経済、地域産業に大いに寄与していると思われる。
 本論考では、米国の経験から日本における「高速道路のあり方」を問い直したい。

■米国の高速道路
 2007年11月と2008年3月それぞれ1週間ずつであるが、ひさびさにカリフォルニア州に環境政策の調査を目的にでかけてきた。11月はロサンゼルスとディエゴ、3月はサンフランシスコ、オークランド、サクラメント、タホ湖などを訪問し、カリフォルニア州内を高速道路を中心に約1600kmも車で走った。
 米国で高速道路はフリーウェイ(Freeway)あるいはエクスプレスウェイ(Expressway)と呼ばれているが、それらは大別して次の3つある。

@州際高速道路(Inter State Highway)
 州と州をつなぐ高速道路であり州際あるいは州間(Inter State)高速道路と呼ばれる。カリフォルニア州で有名な州際高速道には80号線(Inter State Highway 80)や5号線(Inter State Highway 5)がある。いずれも片側5車線、対面で平均10車線もある巨大な高速道路だ。
米国の西海岸を縦断する州際高速道路(フリーウェイ)5号線

A連邦高速道路(Federal Highway)
 次に連邦高速道路(Federal Highway)がある。今回のカリフォルニア州の現地調査では州都であるサクラメントの官庁街があるダウンタウンから宿泊先のカリフォルニア大学サクラメントに近い宿泊先ホテルまで、またホテルからネバダに近いタホ湖に行くときに連邦高速道路50号線(Federal Highway 50)に非常にお世話になった。またサンフランシスコ空港がある南サンフランシスコからサンフランシスコのダウンタウンに行くときに連邦高速道路101号線を頻繁に使った。この連邦高速道路の大部分の車線も片側4車線はある。

B州高速道路(State Highway)
 3つ目の高速道路は、州の高速道路(State Highway)である。カリフォルニア州で有名な高速道路は1号線だ。この道路は、カリフォルニア州の太平洋岸を南北に走っている。昨年11月は10月に起きたサンディエゴの山林火災の調査で訪れたが、ロサンゼルス空港からサンディエゴまで行くときに州際5号線から外れ太平洋側に寄ったとき、何度となくこの州高速道路1号線にお世話になった。
 上記以外の道路は、日本で言うところの一般道路であり州道、市道などの地方道である。 カリフォルニア州高速道路1号線。左側は太平洋岸

■米国の高速道路は無料
 米国の高速道路にも一部有料道路があるが、圧倒的多くの高速道路は無料である。
 フリーウェイというと、無料で使える高速道路と思っている人がいるが、「フリー」の意味は一般道のように交叉点や信号によって、その都度、車が止まることがない道路、スムースに流れる道路を意味している。カリフォルニア州にも州際、連邦、州の高速道路があるが、どれも利用者は日本のようにいちいち料金所で料金を支払う必要はなく、すべて無料で高速道路が利用出来る。
 むろん例外はある。たとえばサンフランシスコ・ベイエリアの場合、ゴールデン・ゲート・ブリッジやベイ・ブリッジでサンフランシスコのダウンタウンに入る車にだけ料金をとっている。これはロードプライシング(road pricing)と言い、大都市中心部の渋滞の緩和や大気汚染対策のために都市の中心部に車が入るのを抑制する施策である。ロンドンはじめEU諸国の大都市でもロードプライシングが実施されているが、日本では実施されていない。
 国土交通省は東京の都心三区を中心に幾重にも同心円状に高速道路を整備することで渋滞を緩和しようとしている。都市高速中央環状線、東京外郭環状道路、首都圏中央連絡道路がそれである。だが、いうまでもなく、この政策は道路を整備すればするほど交通量が増えるという「イタチゴッコ」となるだけでなく、数兆円規模の途方もない巨額の事業費がかかる悪循環となっている。人口、経済、文化の一極集中を極限まで進めておき、道路が混雑するからと、今になって幹線道路を目玉が飛び出る事業費で整備することほどバカげたことはない。その意味で旧建設省、国土交通省は何ら理念なき省益という既得権益を守るだけの土木事業集団に成り下がっているといってもよい。

■国論を二分した米国の高速道路整備方式
 米国の高速道路網は、現在、その昔のローマ帝国時代のローマ街道とほぼ同じ延長となっていると言われる。ローマ帝国は、欧州地域はもとより中東、北アフリカ地域などを席巻する大帝国であった。それに類する道路延長を米国はもっていることになる。もちろん、投機とは言え石油価格が暴騰している昨今、ローマ帝国の領土同様、あまりにも道路延長が壮大であるが故に、米国が滅びることがないとも言えないであろう。すでにその兆候は出ている。
 その米国では、日本同様、最初に高速道路を整備するときに税金で整備するか(直轄方式)、それとも有料道路とし通行料金をもとに道路を整備するかに関して国論を二分する議論が行われたという。
 結局、米国では「高速道路は税金でつくる」という基本政策を掲げ、最終的に高速道路は州際、連邦、州ともに無料となった(もちろん一部例外はある)。
 これには明快な理由がある。すなわち、有料にしても採算が取れないということが分かったためである。あの米国ですら料金収入で高速道路の整備費を償還出来ないのだから、いわんや日本で料金収入で整備費が償還出来るわけがない。
 米国では、高速道路は単に採算性だけで整備の可否を決めるのではなく、厳格な社会経済的な必要性で決めている。しかも連邦政府と州政府による直轄、つまり税金で整備することに決め、その後も一貫してその方針を変えていない。

■のっけから無理な日本の整備方式
 一方、日本はどうかというと、当初から高速道路は有料道路とした。料金収入で高速道路を整備するとしたのである。だが、有料にして採算がとれる高速道路は国土幹線自動車道の東名など一部の路線であった。圧倒的多くの地方の高速道路はのっけから有料にしても採算が取れなかったのである。
 そこで国(当時、建設省)が突如もちだしたのが、料金プール制である。昭和47年に建設省は政令を改正し、高速自動車国道に係る<プール制>を導入した。このプール制は、高速道路の料金収入を特別会計としてプール化、すなわち一本化し、それを原資として採算性の悪い地方の高速道路を整備するというものである。建設省(当時)に言わせれば、「このような根幹的法令の制定とともに事業の採算性の確保等の観点から高速道路を整備する」ことであった。
 しかし、このプール制は当然のこととしてすぐに裏目に出た。日本の「政」「官」「業」の現状追認のトライアングルは、プール制をよいことに、次々にどうみても採算などとれない不要不急な道路を数多く整備路線とし、着工した。こうなると、高速道路などの料金収入をいくらプールしても原資は底をつき、日本開発銀行(当時)の財政投融資など多額の借金を行い、多重債務状態となってしまった。
 もともと有料の高速道路は償還満了となったら、無料で開放することになっていたにもかかわらず、無料になるどころか逆に世界一の高額の利用料となってしまった。ちなみに日本同様、高速道路を料金でつくってきたイタリアの高速料金に比べ、日本の料金はおよそ2倍高い。まさに日本の高速道路は社会保険同様、「国家による詐欺」といわれても仕方のない状況となったのである。
                                                    (つづく)


他の記事も読む